いきなりですが、「あなたの身体の内「人」の部分は10%しかありません!」
えっ~!!て感じですよね(笑)
これはイギリスの進化生物学博士アランナ・コリンの言葉です。
では残り90%は何か?その役割は何か?見ていきましょう。
2003年にヒトゲノムの解読が終わり人の遺伝子の数も判明しました!
- 人体の複雑怪奇な代謝システムの情報が詰まった遺伝子は人でいくつあると思いますか?
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ちなみに発生生物学のモデル
生物の線虫 20500個
マウス 23000個
ミジンコ 31000個
小麦 26000個です。 - では人の遺伝子の数は?
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21000個!
ミジンコやマウスどころか哺乳類ですらない植物の小麦より少ないのです!
にわかには信じがたい数字ですよね。
では、ミジンコ以下の遺伝子でどうやって酵素活性を起こしているのか?
実は私たちの身体を動かし、生命活動を維持してるのは、遺伝子だけではなく90%の人以外の物それがマイクロバイオ―タ―「共生微生物」と呼ばれる細菌、ウィルス、古細菌、菌類です。
私たちは一人で生きているわけではなく、約100兆のマイクロバイオ―タ―と共存共栄してるのです。
地球に生命が誕生して以来、生物はお互いを利用して生きてきました。
微生物との提携は多細胞生物の進化の推進力となってきました。
この微生物たちは私たち身体のあらゆる場所に住み、その場所での環境に適応し細菌叢(コロニー)を作っています。
色々な物に触れる「手」にはバリア機能を持った細菌叢が生息し、胃の様に酸性の胃液に曝される場所では酸に強い細菌がコロニーを作っています。
地球上でもアフリカ大陸、アジア、南北アメリカ大陸、南極、などではその環境に適応した生物や人種が生息してきたように共生微生物も人体のあらゆる場所で適応し自らが生き残るために「人」を守っているのです。
- マウスの実験によると
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微生物たちが居る腸壁では腸内部の襞が長く伸び、食べた物の吸収が良くなります。
微生物たちの居ない腸壁では、襞が小さく食べ物の吸収が悪くなるため、同じエネルギーを得るために30%ほど多く食べないといけなくなります。
微生物たちは腸内の形態まで変えてしまうんです! - 微生物の働き
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私たちが食べた物は消化吸収されながら腸に運ばれていきます。
腸内の微生物は運ばれてきた食べ物をエネルギー源として、その廃棄物をさらに腸に吸収させて腸のエネルギーとして利用しています。
腸のエネルギー源は主に、糖質、ケトン体ですが結腸だけは微生物の出す廃棄物をエネルギーとしているので、微生物が居ない環境だと結腸は死滅してしまいます!
私たちの腸内細菌叢は私たちが食べているものを食べているので、組成比は人それぞれで違います。
微生物が遺伝子を操っている?
私たちは様々な伝達物質を使って遺伝子のオン・オフを切り替えて複雑な代謝をコントロールしていますが、遺伝子に指令を送っているのは私たちだけではなく、微生物たちもそれぞれの目的のために遺伝子に指令を送り、私たちの代謝をコントロールしているのです!
例えば1回に食べる食事の量を自分で決めていると思っているでしょう。しかしそれを決めているのは微生物たちなのです!厳密に言うと、腸内細菌叢の微生物たちが食べ物からどれくらいのエネルギーを引き出すか決めているのです。今までダイエットに失敗した方、それはあなたのせいではなく、微生物のせいかもしれませんね(笑)
微生物と免疫系
微生物たちがコントロールしているのは、体形だけでではなく「免疫系」もコントロールしています。
免疫系はガン、ウィルス・細菌感染に対抗するだけではなく、うつ、自閉症、注意欠陥障害などにも関係しています。
免疫系が暴走しない様にコントロールしているのは「制御性T細胞」通称Tレグ細胞です。Tレグ細胞が働かないと炎症を抑制することができず、致死的な状況に陥る場合があります。このTレグ細胞に指令を出している最高司令官が微生物たちの一つ「バクテロイデス・フラジリス菌」です。これは「PSA」という物質でTレグ細胞をコントロールし、微生物たちを攻撃しない様にコントロールし微生物を守っているのです。ここが乱れると共生し私たちを守っている微生物たちを攻撃します。
腸内で90%ほど作られ幸福感を与える「セロトニン」の前駆物質である「トリプトファン」を免疫系が破壊してしまい、結果的にセロトニンが欠乏することになります。鬱の方はトリプトファン(タンパク質+葉酸+ナイアシン+鉄)が少ないことが分かっており、トリプトファン欠乏と自殺率は比例するのです。
つまり私たちの「幸せ」も微生物たちによって守られているのです。
プロバイオティクスとプレバイオティクス
ではこの重要な細菌叢(マイクロバイオーム)を整えるにはどうすればいいのでしょう?
不必要な抗生物質を使わない!抗生剤は有害な細菌だけではなく身体にとって重要な役割を果たす微生物たちを根こそぎ死滅させます。
絶食、ファスティングはダメ!腸に約12時間食べ物が入ってこないと腸内細菌は食べ物を求めて、本来自分がいるコロニーから移動をはじめその結果、移動先の細菌叢のバランスを崩してしまいます。この現象をバクテリアルトランスリロケーションと呼びます。またディスバイオシス(細菌叢の乱れ、死滅により様々な炎症や病気を発症する)の原因になります。
プロバイオティクスとは身体に有益な細菌群を身体に取り入れる事ですが、食品に含まれる、乳酸菌やビフィズス菌その他の菌類は体内に定着しないことを覚えておきましょう!食べた時は効果を発揮するのですが、時間と共に排出されてしまいます。
プレバイオティクスとは腸内細菌叢の餌となる食品を取ることで、そのために、食物繊維を多く含む食品レジスタンススターチを摂る
- レジスタンススターチ(RS)
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小腸で消化されず大腸に届く、でんぷんとその分解物の総称。
RSは大腸で腸内細菌によって発酵を受けて短鎖脂肪酸に変化し、食欲抑制、大腸粘膜のエネルギー源、バリアー機能正常化、炎症性サイトカイン抑制、レプチン分泌促進(坑肥満ホルモン)
脂肪の合成抑制、β酸化促進(脂肪をエネルギーとして使う)インスリン感受性を高め、血糖値、血中遊離脂肪酸、コレステロールを正常に保つ効果が有りますライ麦、オーツ麦(オートミール)もち麦、大麦、フラクトオリゴ糖、納豆、ナッツ類
以上、簡単ですが腸内細菌についてまとめてみました!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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